香港で「蘋果日報」廃刊ー個人の力でどうにもならない現状

中国,時事

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本日6月24日、香港の新聞「蘋果日報」が廃刊となりました。

民主派最大手といわれていた新聞社で、1995年に創刊されました。発行年数は26年間になりますね。

台湾にも同名の「蘋果日報」という新聞がありましたが、こちらは 2003年に創刊され、 紙媒体のほうは今年廃刊になっています。

どういう関係なのニャ?

台湾のほうは香港の姉妹紙で、おもにゴシップ紙的な内容になっています。現在はオンラインメディア(蘋果新聞網)として継続しています。

香港の「蘋果日報」もオンラインで続ければよさそうニャ。

そうですけど、編集作業自体は国外でおこなったほうがよさそうですね。虎の口の中で行動するのはあまりに無謀かと。

今回はこれまでの香港情勢の流れと、どうにもならない現実をわかりやすく解説していきます。

 

激化していく香港情勢

香港がイギリスから中国に返還されたのは、1997年です。

このとき返還先として中華民国(台湾)と中華人民共和国(中国)があったのですが、イギリスが選んだのは中華人民共和国のほうです。そもそも国連が中華人民共和国を正統な中国と認めていたからですね。

しかし一気に体制を変えることは難しく、とくに経済問題があったので、本国と違う経済制度を採用した「一国二制度」がおこなわれます。

基本的には経済問題に対応するためなのニャ。

中国と海外との、貿易の出入り口としては、香港は都合がよかったというのがありますね。

香港は中国本土とは異なる法制度のもとに、自治権が認められていました。

ただ自治権といっても、「中国の承認に基づいて運営する権限」なので、基本的には中国の承認を通す必要があります。

また自治権(資本主義制度)が認められるのは2047年までです。

といっても、中国自体はすでに日本以上の資本主義社会になっているのニャ。

まあ、制度だけで見れば、日本のほうが社会主義ですね。中国は弱肉強食のきびしい資本主義世界になっていますし。

福祉も生活保護もある日本はいい国なのニャ。

香港では中国の「国家安全条例」に反対する運動がたびたび起こっていました。

この条例は、国家分裂や反乱をおさえこむためのものですが、大規模のデモ活動によって撤回されてきました。

中国は外国の支援を受けているような状況でしたから、当時はあまり強く出られませんでした。

しかし経済面・軍事面で力をつけはじめ、世界相手に戦えるようになってくると、話は変わってきます。

現在は、もはや大魔王的な「世界の敵」みたいな立場になっているのニャ。ラスボスニャ。

中国は2012年あたりから愛国教育を強化しはじめ、香港でもそれを実施しようとしました。

結果、香港での愛国教育必修は撤回されました。

このときはうまくいってたのニャ。

それから民主主義的な直接選挙を市民が求めはじめ、2014年には「雨傘運動」がおこなわれます。

しかし中国側もだんだん強気に出てきてしまい、対立はどんどんエスカレート。「雨傘運動」では強制的な市民の排除がおこなわれました。

そして2019年には「容疑者引き渡し条例」の改正案が提出されます。

これは「香港の容疑者を中国へひきわたしてもよい」といった内容で、政治批判をしている人が捕まったばあい、中国へ送られてしまう可能性があります。

これに危機感を覚えた市民たちが、大規模デモをおこないました。

 

親中派と民主派の対立

もちろん香港市民の全員が、中国に反対しているわけではありません。

いわゆる「親中派」と呼ばれる人たちもいます。

彼らは平穏と秩序のある暮らし、経済的な安定を求めており、街道で騒動を起こすデモ隊を嫌っていました。

どんな物事も一枚岩ではないのニャ。

じっさいのところ、「親中派が40%、民主派が60%」といわれており、民主派が大きく優勢という状態ではないのです。

年齢が高くなるほど安定を求める傾向がありますので、高齢の方に親中派が多いですね。

こういうのは難しい問題なのニャ。現実を考えるとお金が必要なのニャ。それには中国に頼る必要があるのニャ。

台湾も現在はそんな感じになっていますね。台湾は人口も少ないですし、どうしても中国や外国を相手に商売をしなければやっていけません。中国からの観光客が経済を支えているという現状もあります。

「容疑者引き渡し条例」は一時撤回されたものの、警察がやりすぎたこともあり、民主派の怒りはなかなかおさまりません。

警察は小学生まで捕まえていたニャ。怒って当然ニャ。

民主派は「五大要求」をおこない、「一つも欠くことはできない」と強い意思を示しはじめました。

その内容ですが、以下のとおりです。

・容疑者引き渡し条例の撤回。

・直接選挙の導入。

・警察を監視する委員会の設置。

・デモを暴動とする見解の撤回。

・逮捕者の釈放。

これがぜんぶ通らないかぎり、デモを続けるという動きになってきました。

さすがにあるていどで退いておかないと、中国政府も「なめられてる」と思って本気を出してくるニャ。

中国は面子社会ですから、条例撤回あたりでいったん退いたほうが、たがいの面子を傷つけずにすんだ気はします。そもそもこれらを政府がぜんぶ呑むことはありえませんし。

2019年11月には区議会議員選挙がおこなわれ、ここで民主派が80%以上の議席を獲得して圧勝します。

「民主派が過激なデモをしているから、親中派に票が流れる」と思い込んでいた中国ですが、その期待は裏切られました。

 

デモ活動の鎮静化

中国としては、香港市民になめられた状態が続くのは、好ましいことではありません。このままでは面子丸つぶれになります。

中国で面子は重要ニャ。

それでデモを強制的におさえこむため、「香港国家安全維持法」を成立させます。

この内容ですが、「国家分断」「政権転覆」「テロ活動」「外国勢力への協力」を禁止したものになっています。

細かく書いていないのがポイントで、どうとでも罪をつくってしまえるようになっています。

つまりデモをおこなったり、政権を批判したりすれば、

はい、政権転覆で逮捕ね

ということになってしまいます。法的根拠をあたえられるようになったのですね。

また香港に「国家安全維持公署」が設立され、取り締まりがどんどん本格化していきました。

たとえば政府に批判的な記事を書けば、「香港国家安全維持法」の「政権転覆」にあてはめることができるので、逮捕の根拠になるのです。また政府に批判的な本の出版や閲覧も禁止されました。

法律ができるとやりたい放題ニャ。

「蘋果日報」の逮捕および廃刊も、この流れから来ています。

政府に批判的な内容は、法的に逮捕できるようになったのです。

今後は教育法面でも、愛国教育が徹底されていくでしょう。

ジョージ・オーウェルの小説「1984年」の世界ニャ。

中国はIT技術も進んでいますし、個人が太刀打ちできるレベルではなくなってしまっていますね。

 

個人の限界と今後の中国

現実問題、「国」を相手にしてしまったばあい、個人がいくらがんばってもどうにもなりません。

現状の香港では、発言をした瞬間に「香港国家安全維持法」によって「法的に」逮捕することが可能になっています。

そのため、香港にいるかぎりは、どんな声があろうと初期の段階でつぶされます。つぼみのうちから、すべて摘み取れる状態なのです。

政府を批判しても逮捕されない」というのが、民主主義国家かそうでないかの見分け方になるとは思います。

世界の民主主義国家が「政府を批判しても逮捕されない国際連合」をつくればいいのニャ。

このネーミングでつくってくれると皮肉もきいていますし、わかりやすいかもしれませんね。

ただ中国は、これまで他国に何度も侵略されてきた歴史があるので、折れるということはなかなかしなくなるとは思います。すでに軍事力・経済力をつけてしまっていますしね。

それにいまのところ、中国人民も安定志向が強いので、経済的に問題がなければ政府を批判する理由もないといったところです。

けっきょくは、個人は生活のほうを優先するのニャ。

まず生きていくことが重要ですしね。とにかく香港の人たちには、まず生きぬいてもらいたいです。

文化大革命をテーマにした『活きる』という中国映画がありますが、善悪ではなく、どうやって生きぬいていくかということが淡々と描かれています。名作なので、興味のある方は観てみてください。Amazonプライムビデオにもあるかと思います。