猫でもわかる全訳『孫子の兵法書』#3 計篇2ー兵は詭道なり?

2020年6月11日孫子の兵法書

sonshi03k-min

猫でもわかる全訳『孫子の兵法書』」第3回は、『孫子の兵法書』13篇の最初である「計篇」の続きをお届けします。前回の記事は以下のリンクから。

 

戦う前に勝敗は決まる

前回は「計篇」の途中で終わったので、今回はその続きからです。

が我が計略(前回述べた話)を聞き入れるのであれば、この将を用いればかならず勝ちます。だからこの将をそのまま留めます

が我が計略を聞き入れないのであれば、この将を用いればかならず負けます。だから辞めさせます

前回の「道・天・地・将・法」の5つと7つの計五事七計)を理解していない将軍は使わないということなのニャ。

ここの「」は翻訳者によって解釈が変わる部分で、「将軍」の意味ではなく「もし~(将~)」と訳することもあります。その場合は、

もし我が計を聞き入れるのであれば、かならず勝ちます。だから私はこの国に留まります。

もし我が計を聞き入れないのであれば、かならず負けます。だから私はこの国を去ります。

となります。

とにかく前回の五事七計を理解しろということなのニャ。

なにも考えずに戦いを始めるのが一番の問題ですしね。

「とにかくやってみよう」で強大な相手に勝つこともあるかもしれませんが、それはあくまで特殊な例で、確率的には低いです。

小学生の野球チームがプロチームに勝てる確率が相当低いのとおなじで、戦う前に勝敗の見積もりというのは可能です。

つまりそれが「」なのニャ。

とにかくやってみよう」は、失敗しても損失が小さければやってもいいのですが、戦争のような負けたときのリスクが大きい事態のばあいはそうはいきませんね。

投資もそうニャ。

損しても問題ない金額でやるのならいいですが、生活をかけるのであれば、それこそ「」をしっかり考えたほうがいいとは思いますね。

とにかく話を続けましょう。

計」に利があるとわかって聞き入れるならば、そこで「(勢い)」を作り出し、外部の(自分の影響のおよばない事態に対する)助けとすることができます。

」とは、有利な状況を把握して、適した対応をとることです。

自分と敵の戦力や状況をしっかり把握していれば、なにかあってもすぐに対応できるということなのニャ。

そうですね。そしてそれは、戦う前に、敵味方の状況を客観的に確認しておくからこそできることなのです。

 

兵は詭道(きどう)なり

兵は詭道(相手をあざむく行為)なり。

そのため、

(有能)があっても不能(無能)に見せかけ、

(使っている)でも不用(使っていない)に見せかけ、

近づいていても遠くにいるように見せかけ、

遠くにいても近づいているように見せかけ、

敵に有利と思わせて誘い出し、

敵を混乱させて奪い取り、

自軍が充実しているばあいもわざと備えているふりをし、

自軍が強いばあいもわざと敵から逃げるふりをし、

わざと怒ったふりをして敵をかき乱し、

わざとへりくだって敵を増長させ、

安楽であることを見せて敵を疲れさせ、

敵が他国と仲良くしていれば、その国と仲良くして敵との関係を引き裂きます。

とにかく、じっさいと逆の状態だと相手に見せかけるのニャ。

この段も翻訳者によって解釈が変わりますが、だいたいはそういう意味ですね。

ネットで「月100万円稼いだ方法を教えます」っていうのも、詭道なのかニャ?

その例が適切かどうかはわかりませんが、まあ、本当にもうかる方法があるなら、人には教えないとは思いますね。

もしくはを教えるとか。それもまた、ライバルを増やさないための詭道です。

お金払って嘘を教えられるとか、罰ゲームもいいところニャ。

本当にもうかるなら、人に教える時間を使って自分で稼げばいいだけですしね。わざわざサイト立ち上げたり、広告まで打って人を集める必要もありませんし。

考えてみればそうニャ。B・N・F(ジェイコム男)は株で100億円以上もうけたけど、セミナーもなにもしてないニャ。その時間を使って自分で稼いだほうがもうかるのニャ。

その方はお金をもうけることよりも、取引をすること自体が好きみたいですから、人に教えてお金を稼ごうという気はないでしょうね。

話を戻しまして、戦争というものの基本は以上のように「詭道」なのです。相手をだますことなのです。

言い方ニャ。

じっさい、それが戦争に勝つための本質ですしね。スポーツではありませんし。

以上のようにして、敵の無防備なところを攻め、不意を突くのです。

これこそが兵法家が勝つための方法であり、出陣前に手早く伝えられるようなものではないのです。

武士道・騎士道で、「正々堂々」では勝てないのニャ。

死ぬか生きるかの戦争をやっているときに、そういうことはいっていられないでしょう。何十万人、何百万人という人びとの命をあずかっているのですから。

逆に「正々堂々」で、兵士の命を危険にさらす指揮官のほうが怖いですよ。

それもそうニャ。そんな指揮官はただの無能かサイコパスニャ。

戦争では、いかに相手に偽の情報をつかませるかが重要になってきます。欺瞞(ぎまん)作戦という言い方もしますね。三国志の「赤壁の戦い」や、第二次世界大戦の「ノルマンディー上陸作戦」もそうでしょう。

スポーツと違って「良い試合」はないのニャ。勝てない指揮官は、国民や兵士たちにとっては悪なのニャ。

そもそも勝てないなら戦争をするべきではないのです。そのための「」ですね。

 

まとめ

出陣前に廟算(祖先の廟の前で作戦会議を開くこと)して勝てるという結果が出るのは、五事七計で敵味方の状況を比べ、「勝てる」という結果が出たからです。

逆に、出陣前に廟算して勝てないという結果が出るのは、五事七計で敵味方の状況を比べ、「勝てない」という結果が出たからです。

勝ち目が多ければ勝てますし、勝ち目が少なければ勝てません

ましてや勝ち目がまったくなければ勝てるわけがありません

わたし(孫子)は以上のことを観て、いくさの勝敗をはっきりと知ることができるのです。

敵味方の実情も比較せずにいくさはするな」ということニャ。

勝てないなら戦争はするな」ということでもありますね。戦う前に勝敗は決まっているのです。

やってみなければわからない」で兵士たちに命を投げ出させるのは愚策でしょう。むだな戦争はするべきではないというのが孫子の思想です。

そりゃそうニャ。やりたければ、指揮官だけで死にに行けばいいニャ。

それでは、「計篇」はここまでで終わりです。次回からは「作戦篇」になります。