生活保護の取り方を小学生にもわかりやすく解説―国民の権利
命にかかわることなので、学校でも必修科目にしたほうがいいと思う生活保護の取り方。
日本の生活保護の利用率・捕捉率は、世界の先進国から見てもかなり低水準にあります。
捕捉率というのは、生活保護を利用する資格のある人のうち、実際に生活保護を受けている人たちのことです。
ドイツ・イギリス・フランスだと80%以上と高いのですが、日本では20%ぐらいの低いレベルにとどまっています。
日本では「働かざる者、食うべからず」「労働は尊いもの」という間違った考えが蔓延しており、生活保護を受けるのが恥ずかしいことのように思われています。
もし生活保護レベルの給料しかもらえない人たちが、みんな生活保護をとったらどうなるでしょう。
安い給料で働く人がいなくなるので、人を雇うために給料を上げなければなりません。
人件費の安さで回していたブラック企業は淘汰されるでしょう。
それにもかかわらず、
「生活保護レベルの給料でもがんばっている人がいる」
という、経営者にとってはおいしい言葉をいってくれる人たちが、なぜか労働者の中にいます。
しかも生活保護レベルに近い給料の人たちほど、なぜかそのようなことをいって生活保護を叩きます。
今回は生活保護の意義と取り方を見ていきましょう。
労働は尊いものではない
「労働は尊いもの」ではありません。
それは「子どものためにがんばって働いているその人が尊い」わけであって、労働が尊いわけではありません。
労働とは、あくまで労働力を差し出し、その対価としてお金を受け取っているだけです。
無償の奉仕なら尊いかもしれませんが、労働は取引の関係でしかないのです。
中国のレジにいる店員は、客が並んでいないときは普通にスマホで動画を観たりしています。
日本人の感覚だと「だめだろ」と思うかもしれませんが、客が来たときにちゃんと対応すれば「労働」はじゅうぶんにこなしています。
日本人は過剰なサービスを求めますしね。
アメリカン・エクスプレス・インターナショナルの「世界9市場で聞く顧客サービスについての意識調査(2017年)」では、「一度でもひどいサービスを受けたら会社を変える」割合が他の国が30%前後なのに対して、日本だけはその倍近くの56%とダントツに高い結果が出ています。
また他国では、勤務時間が終わったら、仕事を放り出して帰ります。
給料が出ないのだから当たり前です。
サービス残業や過労死が多いのも、「労働は尊いもの」「お客さまは神さま」という日本独特のサービス精神と考えから出てきています。
労働はあくまで取引なので、労働に見合わない給料であれば職場を変えるか、生活保護を取ってください。
やりたい仕事なら、努力するのはかまいません。
ただやりたくもないのに「労働は尊いもの」という言葉に縛られているのであれば、一歩ひいてもっとよい道はないのかを模索してください。
まわりに不幸をまき散らすことなく、自分が幸せになる道を見つけることですね。
自分が幸せになれば、他の人にも幸せになってもらいたいものです。
生活保護は国民の権利
生活保護は国民の権利です。
受給資格のある方は、遠慮せずどんどん取ったほうがいいでしょう。
菅総理も2021年1月21日の参院予算委員会で、
「政府には最終的には生活保護という、そうした仕組みも(ある)」
と発言しました。総理大臣のお墨付きをいただいていますで、遠慮することはありません。
また田村憲久厚労相も昨年、
「生活保護を受けることは国民の権利だ。迷わずに申請してほしい」
と述べています。
生活保護を叩くなど、まったくもって無意味どころか、いずれ自分の首を絞めることにもなりかねません。
人生、なにがあるかわかりませんしね。
「生活保護を叩いているのではない。不正受給者を叩いているのだ」
みたいなことをいう人もいますが、不正受給なんて全体の0.5%程度です。
それに取り締まりをするのは国の仕事なので、一個人が気にする必要はありません。
「国の予算がなくなる」という人もいるかもしれませんが、それも一個人が気にする必要はありません。
気になるなら政治家になってください。
そもそも年収900万円以下は、国から受ける公共サービスの予算に見合うだけの税金を納めていません。
つまるところ、「税金を払って国を支えている」といっていいのは年収900万円以上からになります。
年収900万円以下は、生活保護を受けていなくても国から援助されている状態なのです。
まあ、どうしても日本に貢献したければ、生活保護を叩くより、その時間で年収900万円以上稼いでいただいたほうが助かります。
世界的にも低い生活保護の受給者数
現在の生活保護受給者ですが、2020年10月時点では163万6723世帯、人数でいえば204万9746人が受給し、そのうちの半数以上が高齢者世帯です。
それと2014年以降から生活保護者数は減少に転じています。
2018年度は209万6838人なので、2020年10月時点では5万人近く減ったことになります。
コロナ禍で今後増えていくとは思いますが、総人口で見た受給率はせいぜい1.6%前後レベルです。
ちなみにドイツは9.7%、フランスは5.7%、イギリスは9.27%と、先進国の中でも日本は低い水準にあります。
アメリカだと人口の12%の4000万人ほどがフードスタンプを受けています。
それもありますね。
またGDPに対する生活保護費の割合ですが、ドイツ3.3%、フランス4.1%、イギリス5.0%に対して、日本は0.6%です。アメリカですら1.2%あります。
予算配分をちゃんとすればいいんですけどね。
そんなわけで、ただでさえ予算の少ない生活保護がなぜか叩かれ、さらに予算を減らされるというわけのわからない事態になっています。
その0.5%もよくよく見てみると、「息子のアルバイト収入を申告していなかった」のような、「収入の申告漏れ」がほとんどです。
生活保護のばあい、少額の収入でも申告しなければなりません。
そのような申告義務を知らないという「知識不足」から来ているものばかりで、本当に悪質な不正受給はかなりかぎられています。
生活保護を取るための条件
最低生活費以下かどうか
肝心の生活保護を取るための条件です。
生活保護を受給する資格は、働けないことではありません。
世帯収入が厚生労働大臣が定める最低生活費に満たないばあいであれば、生活保護をとることができます。
そうですね。
後述しますが、働きながら、最低生活費との差額を受け取れます。
最低生活費は住んでいる自治体や年齢、子どもの数などによって変わります。
ただしそこそこの貯金があったり、持ち家や車があるばあいは、「まだ生活ができる」とみなされることがあります。
それらがなく、努力をしても立ちいかないという状態であれば、生活保護を受けることができます。
生活保護は働いていても受給可能
一般的に生活保護は、お金がまったくない人に対して支払われるというイメージがありますが、働いていても取ることができます。
そのばあい、最低生活費から収入をひいたぶんの金額を受け取れます。
たとえば最低生活費が12万円のところに住んでいて、月給が10万円だったばあい、差額の2万円を受け取れます。
そのため、生活保護を受けている状態でも働いていいのです。
ただしさきほどの不正受給の話でもあったように、少しでも収入があったら申告しなければなりません。
また仕送りなどがあったり、人からなにかもらったりしても収入と見なされますので注意してください。
とにかく受け取ったものはすべて収入だと思ってください。そしてぜんぶ申告してください。
生活保護の対象です。働けず、貯金などがなければ、最低生活費との差額を受け取ることができます。
年金が6万円で、最低生活費が10万円なら、4万円を受け取れますね。
不公平感はありますが、そこを叩いてもどうにもなりませんしね。
なにはともあれ最低生活費が基準になるので、住んでいる地域の最低生活費を調べてください。役所に行って聞けば教えてもらえるはずです。
病気で働けないばあい
病気のばあいは、それを証明するために領収書や診断書、障がい者手帳が必要になります。
そのばあいは、年金とおなじように、最低生活費との差額を受け取ることになります。
うつ病などの精神疾患も対象になりますので、病院で診断書をもらうといいでしょう。
持ち家や車があっても生活保護は受けられる
ここもよく勘違いされるところですが、条件によっては持ち家や車があっても受給できます。
ローンを完済させた自宅や、冷蔵庫などの生活家電、パソコンやスマホ(2台目以降は不可)、食卓や椅子など、生活に必要なものは手放さなくてもよいことになっています。
豪邸で、毎年の固定資産税がすごい金額であればさすがに「売り飛ばしてその金で暮らせ」ということになりますが、ローン完済済みで、住宅を借りるより固定資産税のほうが安い状態ならば認められることがあるでしょう。
車も、田舎など生活の便が悪いところに住んでいるのであれば、認められることがあります。
貯金も少額(10万円ぐらいまで)なら認められています。
それはそうでしょう。自立するための手がかりは残しておかないといけませんしね。
それにパソコンやスマホがあれば、仕事を見つけることもできますしね。
ただし生活に必要でないものの所持は認められません。
貴金属とかクレジットカードとか金融商品とかですね。
それらはぜんぶ清算してください。
あとローンが完済していない持ち家があるばあいは、生活保護を受けられません。
ローンを生活保護費から払うわけにはいけないので、売却する必要があります。
扶養調査(扶養照会)について
身内で扶養できる人がいるばあい、生活保護を受けられないことがあります。
扶養調査をおこなうために、両親や息子、祖父母や親戚などに、扶養調査書が送られます。
日本は「恥の文化」があるから、こういうことを気にする人は多そうですね。
ただしこれは、身内にお金持ちがいたとしても、その人が「扶養したくない」といえば(扶養調査書を期限までに送りかえさなければ)、生活保護は受けられます。
その旨を伝えれば回避できます。
現在、扶養照会に対する批判が高まっていることから、見直しがおこなわれています。
生活福祉資金貸付制度
「生活保護を取るまでもないけど、一時的にお金が必要」という人には、「生活福祉資金貸付制度」というのがあります。
高齢者・障がい者・低所得者が利用でき、無利子で借りられます。
ただし将来働いて返せるなど、返済意思があることが条件になります。
また住所と連帯保証人も必要になります。連帯保証人がいないと、年1.5%の利子が付きます。
「住居確保給付金」というのがあって、3カ月の家賃を給付してくれます。まずこれを申請しましょう。
そうですね。返還義務はありません。
それと生活福祉資金貸付制度には「教育支援費」もあります。
大学だと奨学金(という名の学生ローン)をもらうより、無利子の教育支援費を利用したほうがいいかもしれません。最大で月6.5万円を借りることができます。
入学金なら「就学支度費」として50万円まで借り入れられます。
また母子家庭・父子家庭のばあいは、「母子父子寡婦福祉資金」を利用することで、子どもの教育費や結婚資金、就職資金などの借り入れをおこなえます。
生活保護を受けに行くばあい、これら貸付制度を紹介されることもあるかと思います。
生活保護の具体的な取り方
まず住んでいる地域の福祉事務所に行きます。どこにあるかは検索すれば出てくるでしょう。
このときに持参するものですが、職員との会話を録音するため、ボイスレコーダーがあるといいでしょう。なければスマホのアプリなどを利用してください。
福祉事務所の職員は基本親切な方たちばかりですが、たまに申請に来た方を追い払うために、あきらかに間違った知識や違法まがいの発言をすることがあります。
そのため、ボイスレコーダーを用意し、「録音しますね」とまずいってから申請をはじめてください。担当者の名前も録音しておくといいでしょう。
それと「相談に来ました」とはいわずに、「申請に来ました」といってください。
相談だと、本当に相談だけで終わって申請用紙を出さない可能性があります。
聞き込み調査がはじまったら、現状を正直に述べてください。
「まだ働けますよね」といわれても、無理であれば「働けません」とはっきりいってください。
数日後には、ケースワーカーが家庭訪問にやってきます。
そこで家の資産状況などを調べられます。売れるものがあれば売るよう指示があるでしょう。かならず従ってください。それと会話はすべて録音しておいたほうがいいでしょう。
その次の段階が、先ほど述べた扶養照会です。家族や親せきに連絡が行きます。
また銀行口座など金融機関への調査もおこなわれます。当然、証券会社で株などを持っていたらだめです。
すべての審査が終わると、通知書が自宅に届きます。ここまで14日以内におこなわれます。合格か不合格かは通知書に書かれています。
合格したら受給開始です。支給日は地域で違います。
地域や家庭の人数によりますけど、一人暮らしだと住宅扶助入れて11~13万円ぐらいでしょう。
子どもがいれば児童養育加算が付きますし、母子家庭なら母子加算もありますので、もっと多くもらえるはずです。
受給後ですが、月に1度、ケースワーカーの家庭訪問があります。これも会話のやり取りは毎回録音しておいたほうがいいでしょう。
もし収入があったばあいは、かならずケースワーカーに報告してください。
子どもがアルバイトしたばあいも収入になりますので注意してください。
またなにかもらったばあいでも収入になります。
このあたりをしっかり申請しておかないと不正受給と見なされ、生活保護を打ち切られる可能性があります。
まとめ
何度も繰り返しますが、生活保護を受けることは国民の権利です。
そして生活保護は働いていても取ることができます。
給料が最低生活費にとどいていないばあい、貯金もないような状況であれば、最低生活費との差額を生活保護として受け取ることができます。
日本は「労働は美徳」という経営者にとって望ましい環境ができています。
生活保護を取りやすい空気をつくり、「生活保護以下の給料でがんばっている人がいる」などといった、経営者が喜ぶような不幸をまき散らす言葉をいう人が減ってくれればと思います。
「不幸な人が不幸な人の足をひっぱる社会」を無くし、個々人が幸せに暮らせる世の中になることを願いましょう。
最終的には国民全員に無条件で最低限の生活費を配るベーシックインカムに行き着ければと思います。
現代の貧困は、もはや個人の自助努力ではどうにもならないところがありますしね。
ベーシックインカムについてはまた後日書きます。