映画『グリーンブック』あらすじとレビュー・評価・感想ー実話をもとに人種差別問題を描いたコメディムービー|Amazonプライムビデオ
本作のタイトルになっている「グリーンブック」ですが、黒人ドライバーを対象にした旅行ガイドブックのことです。1930年代に「The Negro Motorist Green Book」というタイトルで発行されていました。
なぜ「グリーンブック」なのかというと、本の創刊者の名前がヴィクター・H・グリーンだからです。
当時のアメリカは黒人差別があたりまえのような状況で、ホテルやレストランなどを自由に利用できませんでした。
そこで、黒人でも利用できるホテルやレストランをまとめあげたガイドブックがつくられたのです。このガイドブックは人気を博しました。
前回のギンズバーグ判事を主人公にした映画『ビリーブ 未来への大逆転』でも述べたように、男女・人種の平等が謳われるようになったのは案外最近のことです。
日本でも昭和の人は当たり前のように、「男は仕事、女は家事」みたいな考えがありますしね。
人口が減れば、経済はどんどん悪くなっていきますしね。「男は仕事」なんて悠長なことをいっていられる時代でもなくなってきました。
話を戻しまして、本作では「グリーンブック」に絡んだ物語が展開されていきます。
実話をもとにしていますが、メインとなる二人の性格が見事な対比になっているのが面白いですね。
あらすじを説明しつつ、本作の見どころを紹介していきましょう。
あらすじ(ネタバレあり)
イタリア系アメリカ人のトニー・ヴァレロンガは、口達者なことから「トニー・リップ」とも呼ばれていました。実在の人物で、のちに俳優となり、『ゴッドファザー』の映画にも出演しています。
映画の舞台である1962年では、トニーはニューヨークのナイトクラブで用心棒をつとめていました。しかしそのナイトクラブが改装工事のために閉鎖され、職をうしなってしまいます。
トニーは問題解決能力が高いことを買われ、アフリカ系アメリカ人のピアニストドン・シャーリーの運転手兼ボディガードをつとめます。
ドンはツアーのために、アメリカ南部を8週間まわらなければなりません。
トニーには妻と子どもがいましたが、「クリスマスまでには帰る」という約束で、ドンとともにツアーへ出かけます。
ドンは育ちが良く、一方のトニーは粗野な性格なので、ことあるごとにぶつかりあってしまいます。
それにトニーは、映画の開始時では、黒人に対して差別的な感情をもっていたという部分が描写されていますね。
トニーはツアーへ出かける前に、本作のタイトルにもなっている「グリーンブック」をわたされます。ドンの使用できるホテルやレストランは、グリーンブックに書かれた場所だけにかぎられていました。
トニーはツアー中、ドンの演奏を聞いてその才能を認めます。しかし演奏後に、ドンは差別的なあつかいを受けていたため、トニーはだんだんとドンの境遇に肩入れするようになってきました。
とくにそれが顕著になったのは、ドンが演奏するカントリークラブのレストランで、ドン自身が食事をすることができないことです。「これは差別ではなく、昔からの決まりだ」というレストランのオーナーに対して、トニーは殴りかかろうとします。ドンはトニーを止め、レストランを出ていきました。
トニーはクリスマスにニューヨークへもどることができ、ドンはトニーの家のパーティに参加します。映画はここで終わりますが、二人の友情はその後も続きました。そして二人は、どちらも2013年に亡くなります。
ちなみに現実のドンですが、友人である著作家のデイヴィッド・ハイドゥの発言によれば、映画のような優雅な人物ではなく、粗野な性格で忍耐力があまりなかったとのことです。
映画のばあいは、話を面白くするために、対立するキャラクターの性格を真逆にする手法はよく使われています。
本作ではトニーが粗野な性格であったことから、ドンの性格はその真逆にする必要があったのでしょう。
あくまで映画ですし、面白いことが第一ですから、リアリティをそこまで追求する必要はないかとは思います。
まとめ
本作では、知名度のあるクラシックピアニストでも、黒人であるというだけで差別を受けつづけなければならない現実を、ユーモアをまじえて描いています。
とくに粗野なトニーと、まじめなドンのやりとりは面白いですね。キャラクターが立っている作品でもあります。
ちなみにトニーの息子であるニック・ヴァレロンガが、本作の脚本作成にかかわっています。
あとトニー役はヴィゴ・モーテンセンがつとめています。
テーマは重いですが、エンターテインメント作品としても楽しめますので、Amazonプライムを契約しているのでしたらぜひ見てみてください。