「国民年金基金」のデメリットをわかりやすく解説
iDeCo、NISA、ジュニアNISAと続いてきたデメリットシリーズの第4弾。
今回は自営業・フリーランスのための上乗せ年金「国民年金基金」についてです。
厚生年金の自営業・フリーランス版だと思えばいいでしょう。
厚生年金のない自営業者は、国民年金だけだと老後資金が足りなくなるおそれがありますからね。
それを補うための制度として登場したのが国民年金基金です。
ただこの制度は、一カ月の保険料の掛け金がiDeCoの掛け金と合算されるので、注意が必要です。
すでにiDeCoの掛け金を、最大値である月額6万8,000円近くまで掛けてしまっている方は加入できません。
併用は可能ですけど、その掛け金の合計が月額6万8000円を超えてはいけないということです。
今回は国民年金基金がなにかをさらっとおさらいして、そのデメリットについて見ていきます。
国民年金基金とは?
加入条件
国民年金だけだと、40年間フルに掛け金を払ったとしても、月額6万5000円ぐらいしかもらえません。
会社員の方は、この国民年金の上に厚生年金や企業年金があるので、そのぶんの年金上乗せがありますが、自営業・フリーランスはそれがありません。
そこで1991年に登場したのが、自営業・フリーランスのための厚生年金ともいうべき「国民年金基金」です。
加入条件は以下の通りです。
・20歳以上60歳未満の方で、国民年金の第1号被保険者
ようするに普通の国民年金に加入している人です。
国民年金基金は国民年金の上に成り立つものなので、国民年金に加入していることが条件になります。
国民年金基金だけ加入することはできません。
また厚生年金など、国民年金以外に加入している人もだめです。
ようするに会社員は入れません。
自営業・フリーランスから会社員になった人も、厚生年金にシフトするので資格を取り消されます(払った分の掛け金は、将来年金として支払われます)。
それと特別条件として、60歳以上65歳未満の方、海外に居住されている方で国民年金の任意加入されている方も加入できます。
種類と掛け金について
種類ですが、
・終身年金A型・B型、
・確定年金Ⅰ型・Ⅱ型・Ⅲ型・Ⅳ型・Ⅴ型
の7種類あります。
基本的には終身年金のA型かB型に入るのがいいですね。死ぬまで年金が給付されます。
それと1口目は、かならずA型かB型のどちらかを選ばなくてはなりません。
そして1口目は60歳になるまで払い続けなくてはなりません。
2口目以降は自由に組み合わせてよく、増やしたり減らしたりしてもOKです。事務所に連絡すれば変更してくれます。
ただし1口目を合わせた合計金額が月額6万8,000円を超えてはいけません。
iDeCoに入っていたばあい、その金額も合算して月額6万8,000円までです。
掛け金は年齢によって変わるのですが、A型のほうが掛け金が少し高いです。
というのも、本人が死んだばあいに、遺族に一時金が支給されるという保証がついているからです(ただし保証期間は支給開始から15年間まで)。
B型には保証はありません。本人が死んだらそれで終わりです。
それでいいとは思います。
これは終身ではなく、受給期間が決まっています。そのぶん、掛け金が安く設定されています。
そして本人が死んだばあい、受給期間内なら遺族への払い戻しもあります。
年金が支払われる年齢は以下の通りです
Ⅰ型:65~80歳まで
Ⅱ型:65~75歳まで
Ⅲ型:60~75歳まで
Ⅳ型:60~70歳まで
Ⅴ型:60~65歳まで
そうですね。自分のライフスタイルに合わせて選択するといいでしょう。
それとこれら確定年金の掛け金の合計金額は、A型・B型の合計金額を超えてはいけません。
いくらぐらいもらえるの?
基本的には、A型・B型のみだけで組み合わせたばあい、払った金額が83歳あたりまで生きればもどってくると考えたらいいかと思います。
それ以下の年齢で死ぬと損失となります。
逆に損益分岐点である83歳あたりを超えれば、一生もらい続けられるので、すべてプラスになります。
損益計算は、申し込み時に事務所が提示してくれます。自分で計算しなくても大丈夫です。
まあ、国民年金基金が潰れなければという条件のもとですが。
残った資金を、加入者全員に分配する形になりますね。
そのあたりは投資信託とおなじだとは思います。
国民年金基金のメリットとデメリット
国民年金基金のデメリットを話す前に、まずはメリットを話しておきましょう。
メリット
iDeCoとおなじで、毎月の掛け金がそのまま確定申告時の所得控除になります。
税金を減らすことができるということですね。
最大値の月額6万8000円まで掛けていれば、年間で81万6000円が控除できる計算になります。
これに国民年金の控除額を入れれば、およそ100万円が控除されます。けっこう大きいです。
それと、年金としていくら支払われるかが前もって決まっていることです。受取金額の変動リスクがないということですね(もちろん大元の国民年金基金が潰れない保証はありませんが)。
あと終身年金があるという点も大きいです。
使わないお金があって、「投資はリスクが大きい」と考えるのなら、国民年金基金に入ったほうがいいとは思います。
デメリット
受給金額が前もって決まっているということは、将来インフレしたばあいも、最初の約束どおりの金額しか振り込まれません。
これは現金を持ち続ける方にも同様のインフレリスクがあるので、それだったら国民年金基金のほうがまだましかなと思います。
日本はこれから人口が減っていき、それにともなって国力も減少します。円安とインフレはあるていど覚悟しておいたほうがいいでしょう。
組み合わせておけばいいんじゃないかと思います。分散は投資の基本ですしね。
それと国民年金基金はまだまだ知名度が低く、自営業・フリーランスの方でも知らなかったという方はいるとは思います。
また、景気の悪化により、加入者が減っていることもあるので、将来的に年金が支えられるかどうかというリスクもありますね。
銀行預金も含め、ぜったい安全なものなどありません。
ただ国民年金基金のばあい、基本的に払った分だけもどってくるという定期預金的な感じなので、国民年金のように若い世代が支えるという極端な構造にはなっていません。いまのところ、国民年金よりは安全だとは思います。
まとめと対策
国民年金基金は、イメージ的には「65歳以降から分割で受け取る定期預金」みたいな感じでとらえておくといいかと思います。
余剰資金があって毎年それなりの収入があるのなら、節税効果もありますし、現金でそのまま持っておくより加入しておいたほうがいいとは思います。
毎年の収入が少なければ節税効果はありませんので、ちょっと微妙な感じにはなるでしょう。
あくまで余剰資金があって、全部現金で持っているということに対するリスク回避に使うのがいいかと思います。
現金で持とうが、国民年金基金に入ろうが、インフレリスクは避けられません。
それなら死ぬまでもらえる国民年金基金のほうがまだましかなとは思います。
もちろん、あなたが死ぬまで国民年金基金が潰れていない保証はありませんが。
1~3口ていどを毎月払うのなら全然ありだとは思います。
あとはiDeCoなり、NISAなりで、リスク分散すればいいかと。
それと年金を受け取るときには税金がかかります。
65歳未満は60万円まで、65歳以上は110万円までが所得控除で無税になります。
それを超えると税金が発生し、それにともなって国民健康保険料や住民税も上がります。
そのため、税金で取られるぶんを考えると、将来の受取金額が「国民年金+国民年金基金」を合わせて110万までにおさえておき、あとは貯金なりNISAなりにしておくと、税金分の出費をしなくて済むのではないかとは思います(税金は将来変更される可能性もあるので、なんともいえませんが)。
実際そのとおりで、本当に困窮しているのであれば生活保護をとってください。
日本は「生活保護をとるのがよくない」「生活保護はとるのが難しい」というまちがった考えが広まっており、本当に困窮している人たちがとりづらい状況になっています。
またべつの機会に記事にしますが、生活保護をとるために必要なのは「受給するための条件を満たすこと」です。条件さえ満たせばとれます。
職員の一存でとれたりとれなかったりするのであれば、それは法律違反です。
「受給が難しい」といっている方は、よくよく話を聞いてみれば、車を持っていたり、不動産を持っていたりといった、条件を満たしていない方たちだったりします。
死ぬよりましですので、生活に困窮したばあいは、生活保護が必要であれば遠慮せずにとりにいくことをおすすめします。