「仕組債」を小学生にもわかりやすく解説ー危険性について
「小学生にもわかるシリーズ」の、今回のお題は「仕組債」です。
金融商品にはいろいろなものがありますが、仕組債はとくにわかりにくい形になっています。
将来、「仕組債を初めて知った」→「なんか利回り良くていいんじゃない?」となにも考えずに投資してしまうことを避けるため、どのような商品かをわかりやすく解説していきます。
株と債券とデリバティブ
まず一般的な投資対象としては、株券が挙げられます。
株券は株式会社が発行しているもので、一般的には会社の業績が良ければ上がりますし、悪ければ下がります。
それをいいだすときりがないので、今回は考慮しないでおきます。
これ以外に、債券というものがあります。
お金を借りるために発行し、将来約束した利息付きで返すというものですね。
会社の債券は社債といいます。
もう一つ、株の仕組みを利用したデリバティブというものがあります。
デリバティブにはいろいろな形態があります。
たとえば、円とドルなどの外貨を交換する「スワップ」。
将来株をいくらで買うか決めて、時期が来たときにその値段で買うかどうかを決められる「オプション」といったものです。
そうですね。ただし、「その値段で買う権利」の代金は払わないといけません。手数料みたいなものですね。
じっさいややこしいです。
そこで証券会社などでは、みんなが買いやすいように、債券とデリバティブをセットにして、仕組債という商品を作り出しました。
そこが落とし穴になっていたりします。
仕組債とは?
先述したように、仕組債は債権とデリバティブを組み合わせたものです。
デリバティブは、おもに先ほど説明した「オプション」取引が組み込まれていますね。
債権は借金のようなものなので、一定の期間が立てば利子を付けてお金を返してくれます。
お金を返してくれる日を償還日といいます。
債権と似たようなもので、償還日になると約束した利子を付けてお金を返してくれます。
ただし、利子を付けてお金を返すかどうかは会社の株価が関係してきます。
会社の株価が、約束した価格より上がったばあい、償還日を待たずに終了します。
そして預けたお金とその利子を払ってくれます。
この「約束した価格」のことを「ノックアウト」といいます。
そんな甘い話だけではありません。
逆に株価が「ここまで下がったらもうヤバい」という価格も設定されています。
この価格を「ノックイン」といいます。
株価がノックイン価格を一度でも下回り、償還日に設定された予定価格より下回ったら、約束した金額以下でお金が戻ってきます。
いわゆる元本割れですね。
そのばあい、預けたお金とその利子を払ってくれます。
それが罠だったりします。
仕組債の問題点
仕組債がやっていることは、期限付きの株売買とほぼ似たようなものです。
買った株が一定以上上がったら、売却で利益確定。
買った株が一定以下に下がり、期限が来ても価格がもどらなかったら損切売却。
「ノックイン」システムがある以外は、やっていることはこれとあまり変わりません。
「債券だから安全」という方もいますが、ぶっちゃけ期限付きで株やってるようなものです。
そうですね。期間が過ぎたら強制手じまいです。
それで仕組債は「債券+デリバティブ」といいましたが、債券で得られる利息は1%あればいいほうです。
それなのに、仕組債は2~8%など高い利息が用意されています。
そうですね。債券を買ったうえで、オプション取引をやっているようなものです。
利益確定の幅がせまく、損切の幅(ノックインの幅)が大きいばあい、ちょこちょこと積み重ねてきた利益があっというまに消し飛ぶこともあります。
いまちょうど株価が上昇基調なので、早期償還が繰り返される状態になることから、償還されたお金を再投資にまわし続けると、下がったときにこれまでの利益を一気に吹き飛ばすばあいもあるでしょう。
再投資を続けるということは株価が上がり続けることが前提ですが、株というのはずっと上がり続けるわけではないのです。
つぎに、仕組債が投資家にとって不利で、金融機関にとって有利になっている理由を説明します。
金融機関が得するシステム
仕組債を売りたがる金融機関が多くなっているのは、もうかるからです。
オプション取引というのは、約束した株価で売る人と買う人がいます。
この売る人が投資家、買う人が金融機関です。
オプション取引では、どちらももうかるということはなく、投資家がもうかれば、金融機関は損をします。
金融機関側は、株価が上がって早期償還されると損なのですが(高値で買わないといけないので)、先ほども述べたようにせいぜい2~8%の幅です。
逆にいえば、投資家は利益が限定的ということですね。
一方で、株価が下がると、買い手である金融機関側は安値で買うことができるので得をします。
下がれば下がるほど金融機関はどんどん得をして、投資家はどんどん損をします。
投資家は利益限定、損失がっつりですね。
自分が不利になる仕組みを作るわけないじゃないですか。お金を稼ぐという仕事なんですから。
まとめ
以上はわかりやすいようにかなり簡単なイメージで説明していますが、実際の仕組債はもっと複雑です。
しかし少なくとも、投資家側が不利ということに変わりありません。
それと仕組債には手数料も含まれており、投資するたびに取られることになります。
そして投資家の利益は限定的にもかかわず、損失はがっつりなので(逆に金融機関は損失は限定的で、利益はがっつり+手数料)、投資を繰り返せば繰り返すほど不利になっていくでしょう。
まとめると、
・投資家の利益は限定的、損失はがっつり。
・金融機関の損失は限定的、利益はがっつり+手数料。
・投資を続ければ続けるほど、株価が下がったときに利益をがっつりとれる金融機関が有利になる。
これらのリスクを踏まえたうえで、仕組債を利用するのがいいでしょう。
銘柄にもよりますが、長期投資ならそのほうがいいかもしれませんね。
基本的に投資は、自分の理解できないものには投資しないというスタンスを守り、リスクを理解したうえで投資をおこなうのがいいかと思います。