カバード・コール戦略商品の危険性を小学生にもわかるように解説

2021年7月19日小学生にもわかるシリーズ,株式

covered call

投資ブームが過熱してくると、複雑な金融商品が売れるようになってきます。

その中で、10%前後の高分配金をうたう「カバード・コール戦略」の投資信託やETFが注目を集めてきました。

聞いたことないニャ。

わかりやすくいえば、「毎月分配型」の高配当ファンドや高配当ETFですね。

なぜか日本人は高配当商品が好きなため、売れ行きがいいです。

とくに高齢の方は「毎月おこづかいがもらえる」みたいな言葉につられて買ってしまうのニャ。

運用期間が短いから、はやく利益を得たいとあせってしまうため、このような商品に手を出してしまうのでしょう。

この手の商品は、信託報酬が高いうえに、配当を配るために元本部分がどんどん削られていくため、トータルリターン(元本+分配金)はマイナスであることが多いです。

この手の商品がどうして高配当を出せるかといえば(現実には、大半が元本を切り崩しているだけなのですが)、「カバード・コール戦略」というオプション取引の手法を使っているからです。

今回はこの「カバード・コール戦略」商品について、わかりやすく解説していきます。

 

カバード・コール戦略とは?

株取引には売ったり買ったりする以外に、「オプション取引」というものがあります。

これは株を買うのではなく、株を売ったり買ったりする権利を買うものです。

権利を買うってどういうことなのニャ?

たとえば1000円の株があったとします。

これが1200円になったときに買う権利10円で販売します。

1ヶ月が過ぎたころに株価が1500円になっていたとしたら、このときに1200円で買う権利を発動。

なんかカードゲームのトラップカードみたいだニャ。

1200円で1500円の株を手に入れられたので、差し引き

300円ー10円(買う権利)=290円

の利益が出たことになります。

逆に買う権利を販売したほうは、1000円の株を1200円で販売したことになるので、利益は

200円+10円=210円

になります。

どっちも得したのニャ。

株価が上がれば、ですけどね。

つぎに株価が下がったときのことを考えてみましょう。

1000円の株が、一ヶ月後に800円になりました。

1100円で買う権利を持っているほうは、権利を放棄すれば、この株を買わずにすみます。

すると損は、

10円

だけになります。

権利を行使しなかったのニャ。

一方、株を持っているほうですが、1000円の株が800円になったので、200円の含み損が出ました。

ただ、権利分の料金(10円)はもらっているので、

200円-10円=190円

の損失ということになります。

どっちも損したけど、含み損抱えているほうの損失が権利分ちょっと緩和されたニャ。

この買う権利を売るほうのやっていることが「カバード・コール戦略」といいます。

権利代をプレミアム(オプションプレミアムといい、損してもプレミアム代だけは絶対もらえるので、損失を和らげることができます。

もともとオプション取引は株を持っていなくても可能な取引です。

しかし株を持たないでこの戦略をやると、株が高騰したときに大損します。

たとえば1000円の株を1200円で買う権利を10円で売ったあと、株価が2000円になったとします。

相手の利益は

2000円-1200円-10円=790円

です。

一方、こちらは株を持っていませんので、790円を相手に払わなければなりません(正確には2000円の株を購入して相手にあたえ、相手から1200円を受け取る)。

さっきはどっちももうかったのに、株を持たないでオプション取引をやったら大損になったニャ。

こういう株を使わないオプション取引を「ネイキッド・コール」といいます。

株価がいくらまで上がるかわからないことから、損失はある意味無限大といえるでしょう。

危険すぎるニャ。現物株を使ったカバード・コールのほうがいいニャ。

ネイキッド・コールのリスクをおさえた戦略が「カバード・コール戦略」といえます。

この戦略を成功させるための一番の方法は、「上がる株」を使って取引をすることです。

クソ株でやったらだめなのニャ。

 

カバード・コール戦略を使った投資商品の問題点

カバード・コール戦略を利用した投資商品は、「株の利益+プレミアム代」を分配金にまわすことができます。

たとえば先ほどの例で、1000円の株を1200円で買う権利を10円で販売し、1500円になったとき、

200円+10円=210円

の利益が得られます(1200円以上の利益はすべて相手のもの)。

この210円を分配金にするというのが、カバード・コール戦略の商品となります。

しかし、本来得られたはずの1200円以上分の利益は得られません

伸びしろのある株でカバード・コール戦略をやると損するニャ。

もうひとつの問題は、利益は限定的でも、損失はすべてかぶることになります。

たとえば1200円の株が200円になったら、1000円の含み損になりますね。

下方向のリスクはすべてかかえているのに、上方向の利益が限定的なのがなんか嫌ニャ。というかこれ、以前説明した仕組債に似ているニャ。

仕組債のほうがはるかにエゲツないと思いますが、カバード・コール戦略も大きな利益を狙えないという点では似たようなものでしょう。

問題として、「株価は上にのびないけど、下にはいくらでも落ちる」という形から、どんどん元本部分が少なくなってしまう可能性があります。

利益ちょこちょこ、損失ドカーン」のパターンですね。

「損失ちょこちょこ、利益ドカーン」のほうがいいニャ。一回で利益が吹き飛ばされるのが嫌ニャ。

そのため、毎月分配型の投資信託を買うばあいには、基準価格がどんどん下がっているものを買わないように気をつけましょう。

どんどん下がっているものは、元本を切り崩して払ったことにしているだけです。利益から払われているわけではないのです。

いわゆるタコ足配当ニャ。

基準価格が上がらなければ、いずれ減配や無配になります。

分配金でごまかされていますが、もとになる基準価格が下がっていれば損していることになります。配当金については以下の記事を参照してください。

証券会社側からすれば、手数料を多く取れるし、高配当で釣れるしで良い商品なのですが、消費者側からすれば手を出さないほうがいい商品ですね。

 

まとめ

「カバード・コール戦略」は、自分の持っている株を安全に売りたいというときには使えるのですが、他人まかせの投資信託などで運用されると、だいたいろくな結果にはなりません

筆者はITバブル前から投資をやっていますが、

投資ブームになる。

投資初心者が毎月分配型の投資信託に手を出す。

バブル崩壊で元本半額以下。回復もかなり遅い(そもそもバブル前まで回復しない)。

投資信託を売り払い、もう投資はやらなくなる。

みたいな歴史がこれまで繰り返されてきました。

今回も投資ブームがはじまって、またおなじことが起こっています。

投資するなら米国インデックスなど、まともな投資先に時間をかけて積み立て投資するのがいいでしょう。

日本株は基本成長しない(いまは一時的に上がっているだけので、それを使った毎月分配型の投資信託とか、どんな未来が待っているかは目に見えています。

とくにリートなど、変動率の大きいものは、下がるときにはすごい下がります

それはもう、びっくりするぐらいに。

日本株は基本的に短期でやるものですので(ひたすら上下に循環しているだけなので)、買ったまま放置せず、利益が出たらさっさと撤退するのがいいでしょう。

もしくは暴落時に高配当なバリュー株を購入して、長期保有するのがいいかと思います。

いまは日本株を買う時期じゃないのニャ。

他人まかせの資産運用は地獄への道にしかならないので、あるていど自分で勉強して投資するのがいいかと思います。

チャールズ・エリス氏の名著『敗者のゲーム』にはこう書かれています。

賢明な投資家は自ら判断する。

自分にはわからないから専門家に任せようとしても、うまくはいかない。

相手の能力を評価できないのに、どうして適切な専門家を選ぶことができるのか?

勝つことより負けないための投資術が書かれた本なので、興味のある方はぜひ読んでみてください。

米国ETFの「QYLD」については、QYLD全力太郎氏の以下のブログ記事が参考になるかと思います。