遺産相続税を小学生にもわかりやすく解説
今回は日本の遺産相続と、それにかかる税金について、小学生にもわかりやすく解説していきます。
世の中なにがあるかわかりませんし、将来なにかあったときのために基礎知識があったほうがいいでしょう。
こういう話題を避けたがる人が多いのも承知ですが(いずれかならず発生することなので、個人的には避けるべきではないと思うのですが)、知らないより知っているほうがいいかと思います。
もめごとに発展したり、だまされたりということもありますからね。
遺産相続の基本
特殊な例は置いておいて、両親のどちらかが亡くなったばあいについて述べます。
この亡くなった方を被相続人といいます。
被相続人が亡くなったときにすること
まず亡くなってから7日以内(国外の場合は、死亡を知ってから3カ月以内)に、役場に死亡届を提出しなければなりません。
これには死亡診断した医師の書いた死亡診断書を添える必要があります。
基本的には家族ですが、いないばあいはその家の家主や同居人ですね。
ただ手続き上、届け出自体は葬儀屋がおこなうばあいがあります(埋葬許可も申請しないといけないので)。
自分で葬儀をするばあいは、火葬許可もとってください。死亡届だけではだめです。
よくわからなければ、病院か役場に聞けば親切に教えてくれるでしょう。
弁護士に聞いてもいいですが、お金がかかりますしね。役場は無料で教えてくれます。わからないことはどんどん質問するといいでしょう。
これ以外にも、被相続人の使用していた金融機関への届け出、電気・ガス代など公共料金の名義変更をおこなう必要があります。
相続税の申告はいつまで?
相続税の申告ですが、被相続人が亡くなってから10カ月以内におこなわなければなりません。
無申告ですから、わかりやすくいえば脱税になりますね。
申告しなかった期間について、無申告加算税がかかってきます。
被相続人の財産
被相続人の財産ですが、土地や家、お金以外にも、家具や美術品、電気製品なども含まれます。
中古品の売買価格などを参考に、一つひとつ値段を出していかないといけませんね。
金やプラチナなど、値段の変動するものは、相続開始日の価格で計算します。
また借金も財産に含まれます。
借金は相続放棄すれば、引き継がなくても大丈夫です。
ただし土地や家、お金などの相続もすべて、もしくは部分放棄することになります。
さすがにそれは都合が良すぎるでしょう。
財産を合わせた合計がプラスなら相続、マイナスなら相続放棄をすればいいと思います。
ここで重要なのが、相続するか放棄するかを3カ月以内に決めなければなりません。
10カ月以内は相続税の申告です。
相続するかどうかの判断は3カ月以内なので注意してください。
相続しないばあいは、家庭裁判所で手続きをおこないます。
誰が遺産を相続するかについて、決めなければなりません。
これについては次の章で述べます。
遺産分配について
つぎに被相続者の遺産をどうやって分配するかについて述べていきます。
遺言が最優先
遺産分配にはルールがありますが、もし被相続者の遺言があったばあい、その内容が最優先されます。
実際にそういうことがあると裁判沙汰にまでなってしまって、かなり面倒になりますね。
とりあえずその話は置いておいて(基本的に特殊な例は置いておきます。特殊な例は弁護士に相談してください)、遺書の内容はすべてに優先されます。
遺書に、家族以外のAさんという人に「遺産を全部渡す」と書かれていれば、そのとおりにしなければなりません。
法定相続人について
遺言がないばあいは、法律にしたがって遺産を分配します。
民法で定められた相続人ですので、法定相続人といいます。
基本的には死亡した被相続人の配偶者(結婚している相手)と、その子どもたちになります。
子どもがいないばあいは、被相続人の親や兄弟がその対象になります。
具体的には、以下の順番で法定相続人が決まります。
配偶者はかならず相続人になれる。
1:子、孫
2:父母、祖父母
3:兄弟姉妹、おい、めい
複雑な状況になったばあいは、弁護士を利用してください。
複雑なケースは専門家にまかせたほうがいいです。
法定相続分について
遺産の分配ですが、相続人の構成によって決められています。
これを法定相続分といいます。
配偶者と子どもが相続人になったばあい、配偶者に2分の1、残りを子どもたちで分けます。
子どもが2人いれば、4分の1ずつですね。
配偶者が死亡しているばあいは、全額を子どもたちで分けます。
配偶者と両親が相続人になったばあい、配偶者に3分の2、残りを両親で分けます。
配偶者と兄弟姉妹が相続人になったばあい、配偶者に4分の3、残りを兄弟姉妹で分けます。
遺産相続税について
次に相続税がいくらかかるのかについてです。
まず遺産の合計金額から、控除額を引きます。
この控除額ですが、
3000万円+600万円×(法定相続人の数)
となります。
たとえば配偶者が1人、子供が2人いたばあいは、
3000万円+600万円×3=4800万円
になります。
そうですね。4800万円以上について、税金がかかってきます。
たとえば先ほどの家庭の遺産が8800万円あったとします。
4800万円までは無税なので、税金がかかるのは、
8800万円 ー 4800万円 = 4000万円
の部分となります。
この課税分を、配偶者が2分の1、2人の子どもがそれぞれ4分の1ずつ負担することになります。
配偶者:2000万円
子ども:それぞれ1000万円
以下の表を使います。
1,000万円以下:金額の10%
3,000万円以下:金額の15%ー50万円
5,000万円以下:金額の20%ー200万円
1億円以下:金額の30%ー700万円
2億円以下:金額の40%ー1700万円
3億円以下:金額の45%ー2700万円
6億円以下:金額の50%ー4200万円
6億円超:金額の55%ー7200万円
配偶者は2000万円なので、
2000万円×15%-50万円=250万円
子供は1000万円ですので、10%の100万円ですね。
いえ、まだ計算は終わっていません。
つぎに相続税を合計します。
250万円+100万円+100万円=450万円
この450万円が相続税の総額です。
これを相続人の法定相続分で負担していきます。
配偶者:450万円×50%=225万円
子ども:それぞれ450万円×25%=112万5000円
いえ、まだ計算は終わっていません。
配偶者は法定相続分、または1億6000万円までの、いずれか多いほうに達するまで相続税がかからないのです。
そうですね。
子どもはそういうのがないので、112万5000円を払わなくてはなりません。
これは場合によります。
むしろ損をすることもあります。
全額相続した配偶者がすぐに亡くなったばあいを考えてみてください。
8800万円を2人の子どもがそれぞれ2分の1ずつ相続することになります。
しかし彼らは配偶者ではないので、さきほどの控除を使うことができません。
まず基礎控除ですが、
3000万円+600万円×2=4200万円
8800万円ー4200万円=4600万円
それぞれ半分の2300万円ずつになるので、
2300万円×15%-50万円=295万円
295万円×2=590万円が相続税の総額になります。
これを50%ずつ負担して295万円ですね。
2人で引き継ぐばあい、さきほど計算したように4200万円までは税金がかかりませんから、税の対象になるのは200万円だけです。
これの10%なので、それぞれ10万円ずつになります。
そのため、この2回連続の相続で払う税金は、
112万5000円+10万円=122万5000円
になりますね。
さらにいうと、実際には亡くなった配偶者自身も財産があります。
相続するのは8800万円だけではないので、税金はさらに増えることになるでしょう。
これは極端な例ですが、相続金額や生活の支出によっては、むしろ子どもに全額相続させてしまったほうがお得なばあいもあります。配偶者控除を簡単に考えないほうがいいでしょう。このあたりは自分で計算してみるといいかと思います。
まとめ
中学受験する子ならわかるかもしれません。興味がある話題かどうかは別ですが。
なんにしろ、以下の3点はおさえておいてください。
被相続人が死亡したばあい、死亡日から
・死亡届は7日以内。
・相続放棄するかどうかの決定は3カ月以内。放棄するばあいは家庭裁判所へGO。
・相続税の申告は10カ月以内。
におこなわなければなりません。
申告しなければ無申告となり、あとあととても面倒なことになります。
それと配偶者控除は大きいですが、場合によっては損をすることもあるというのも覚えておくといいでしょう。