映画『ビリーブ 未来への大逆転』あらすじとレビュー・評価・感想ーギンズバーグ最高裁判事の若き日を描いた名作|Amazonプライムビデオ

2021年6月27日Amazon,Amazonプライムビデオ

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昨年(2020年)の9月18日に亡くなった、アメリカ連邦最高裁の女性判事ルース・ベイダー・ギンズバーグの若き日を描いた映画『ビリーブ 未来への大逆転』。2018年にアメリカで、翌年には日本でも公開された作品です(英語タイトルは「On the Basis of Sex」)。

トランプが大統領をつとめていたときに、ニュースでこの人の名前を見たことがあるニャ。

いまでこそ「自由と平等の国」というイメージのあるアメリカですが、映画の舞台となる1970年代はまだ男女平等が当たり前ではありませんでした。

ギンズバーグはそんな時代に、性差別に関する数々の法廷闘争を起こしてきました。そして連邦最高裁で性差別を違憲とする裁判に勝利し、一躍有名になります。

この映画では、そんなギンズバーグの「男性に対する性差別裁判」での勝利を描いた作品になっています。

女性に対する性差別じゃないのニャ。

これは男女関係なしに、「「性差別」自体がそもそも違憲である」ということを世間に知らしめた裁判として画期的だったのです。

トランプが大統領をつとめていたころ、アメリカ連邦最高裁の9人の判事のうち、5人は保守派でした。ギンズバーグはリベラル派の判事でしたが、80歳半ばの高齢にもかかわらず仕事をつづけていました。彼女が辞めたときに、トランプが保守派の判事を送りこむことを危惧したからともいわれています。

ギンズバーグが亡くなった2020年9月18日は、大統領選挙投票日の約一カ月半前。普通なら大統領選後に後任を決めるのですが、トランプは保守派であるバレット判事を後任に任命しました。

これで判事は保守6人・リベラル3人と、バランスが崩れることになります。

選挙で負けたときの保険なのかもしれないニャ。

現実ではトランプは負けて、結果が覆ることもありませんでしたけどね。保守派だからといって、かならずしもトランプ支持なわけではありませんし。

今回は映画『ビリーブ 未来への大逆転』の内容とレビュー・感想などをお届けします。

 

あらすじ(ネタバレあり)

映画はギンズバーグがハーバード大学ロースクールの1回生になったころからはじまります。

ギンズバーグは大学卒業後に夫となるマーティン・ギンズバーグと結婚しており、ロースクール入学一年前に娘が生まれています。ちなみに夫のマーティンもおなじロースクールの2回生に在籍していました。

夫婦ともロースクールに通っていたのニャ。

当時のロースクールの状況ですが、500人以上いる学生に対して、女性はたったの9人だったそうです。

少ないニャ。

ロースクールを卒業できても、そのあと女性が弁護士として就職できるかどうかの問題がありますしね。

夫は在学中ガンになったため、その看病に加えて娘の世話をし、さらにロースクールの勉強もしなければならないという状況でした。

勉強に子育てに看病とか、たいへんすぎるニャ。

幸い夫のガンは寛解し、ニューヨークの法律事務所に就職することができました。

ギンズバーグは夫とともにニューヨークへ行くため、ハーバード大学を辞め、コロンビア大学に移籍します。

首席で卒業できたのですが、どこの法律事務所の面接を受けても受からないといった状況が続きました。当時の法律事務所は、女性が弁護士になるというのを受け付けられなかったのですね。

いまだと性差別で訴えられそうニャ。

けっきょくギンズバーグは弁護士になることをあきらめ、ラトガース大学で教職につきます。

そののち、男性に対する性差別の案件が、夫を通じてギンズバーグの知るところとなりました。

モリッツという男性が働きながら母親の介護をしているのですが、未婚であったことから、介護士を雇っても所得控除が受けられないというものです。

女性のばあいは、所得控除が受けられます。

なんで男女で違いがあるのニャ?

日本もそうですが、当時の社会では、「夫は働き、妻は家事をする」というのが一般的でした。

現在だと経済的な問題もあって、共働きのほうがあたりまえニャ。

当時は経済が上向きでしたしね。いまは夫の収入だけだときびしい家庭も多くなっています。

それで女性が所得控除を受けられるのに、男性が受けられないというのは、「介護は女性の仕事」という考えがあったからです。

これこそが性差別だと考えたギンズバーグは、モリッツのために裁判をたたかうことになります。

高等裁の裁判官は全員男性なので、男性の性差別裁判なら勝ち目があるかもしれないと踏んだのでしょう。

最初の裁判では、ギンズバーグの弁護士としての経験不足と、そもそも裁判官が全員男性であることから受け入れられませんでした。

しかしギンズバーグは、「過去の性差別の判例によって、現在の性差別がつくられている」ということを説明し、その「負の連鎖」を断ち切り、「画期的な新しい前例」をつくるよう裁判官たちに訴えかけます。

この裁判がきわめて危険だったのは、裁判に負けたばあい、その結果が未来における裁判の判例になってしまうからです。

そうなると、性差別への社会の在り方がさらに後退してしまう可能性が出てきます。

大きな賭けだったのニャ。勝ってよかったニャ。

映画は裁判に勝利したところで終わりますが、「画期的な新しい前例」ができたことにより、その後の性差別問題は大きく進展したといえるでしょう。

 

まとめ

ギンズバーグ判事のことをまったく知らなくても、映画としてじゅうぶん楽しめる作品になっています。

ギンズバーグ判事が連邦最高裁の判事に推薦されたのは映画の20年後、1993年のクリントン政権のころです。

民主党政権のころなのニャ。

当時大統領だったクリントンはギンズバーグを判事として指名。議会上院で投票をおこなったところ、96対3の圧倒的多数で就任が決定しました。

ちなみにギンズバーグは、女性としては2人目(1人目はサンドラ・デイ・オコナー)の最高裁判事です。

2009年にはすい臓がんと診断されましたが、それでも入退院を繰り返しながら、2019年まで仕事をつづけていました。

すごい人ニャ。

ギンズバーグ判事は、アメリカの歴史を変えた偉人ともいえるでしょう。

ちなみに映画で出てきた娘のジェーンは、現在はコロンビア大学ロースクールの教授をつとめているそうです。

娘も優秀なのニャ。