『ズートピア』あらすじとレビュー・評価・感想ー「わかりやすい敵」をつくるアメリカ社会への風刺

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動物たちが暮らす世界を舞台に、「ウサギ」として初の警察官となった少女(ウサギ)ジュディの物語『ズートピア』。

動物を使ったアメリカ社会の風刺も話題になった作品です。

前から思うんだけど、こういう世界の動物ってなんの肉食ってるのかニャ?

そこは触れてはいけない部分ですね。

作中に出てくる食べ物に肉類はなかったので(たぶん)、だれも困らないようなものでも食べているのでしょう。

本作は中国でも『疯狂动物城』というタイトルで大ヒットした映画です。ディズニー映画では一番ヒットした作品といわれていますね。

中国で人気あるのニャ。

ただ筆者は観ていなかったので、最近になって「Disney+」で観ました。

今回はそのあらすじや感想・評価などをお届けします。

 

『ズートピア』のあらすじとレビュー(ネタバレあり)

田舎町に住むウサギの少女ジュディは、小さいころから警察官になりたいと思っていました。

警察官は体の大きな動物がなるものなので、ウサギがなった例はまだありません。

しかしジュディは警察学校に入り、厳しい訓練を乗り越えて首席卒業。

巨大都市ズートピアの警察署に配属されることになりました。

ウサギ初の警察官なのに首席卒業はすごいニャ。

ズートピアにはさまざまな動物たちが暮らしており、多様性を認める都市という、現在のアメリカのような場所になっています。

そこには肉食動物から草食動物まで、ありとあらゆる動物たちが住んでいます。

そのズートピアで、肉食動物だけが行方不明になったという事件が発生。

ジュディは事件の調査を願い出ますが、署長の水牛ボゴに「ウサギには無理」と思われ、駐車違反の切符切りの仕事をやらされます。

仕事中にジュディは、キツネのニックがゾウの経営するアイス屋で、子どものためにアイスを買おうとしているのに出くわします。

ゾウは、「キツネには売れない」といったため、ジュディは怒って店員を説得し、ニックのためにアイスを買ってあげました。

ところがニックは、ゾウのアイスを手に入れ、それを溶かして小動物たちに1本2ドルで売るという転売ビジネスをやっている詐欺師でした。

せこいニャ。

その後、ジュディは駐車違反の取り締まり中、屋で起きた強盗事件の犯人を逮捕します。

しかし職場放棄したことで、ボゴ署長に怒られました。

そこへカワウソの女性が、「夫が行方不明になった」と警察署へやってきました。

ジュディはその事件の調査を勝手に引き受けますが、ボゴ署長に「48時間以内に見つからなければクビ」といわれます。

ジュディは、事情を知っていると思われるニックの協力を得て、ズートピアで行方不明になった肉食動物たちが監禁されている場所をさぐりあてます。

監禁するよう指示していたのは、市長のライオンハートでした。

というのも、さらわれた肉食動物たちは野生化してしまっており、無差別に他の動物たちを襲うようになっていました。

肉食動物たちに対する信用低下を恐れたライオンハート市長は、野生化した肉食動物たちを監禁し、世間の目に触れないようにしていたのです。

ライオンハート市長は逮捕され、ヒツジの副市長ベルウェザーが昇格して市長となります。

ジュディは会見の場で、「肉食動物はいつ野生化するかわからないので危険」というような差別発言をしたことで、ニックに嫌われてしまいます。

肉食動物と草食動物とで分断が起こったのニャ。

作品中で、「肉食動物と草食動物の比率は1:9」のようなことがいわれていましたが、これは肉食動物をマイノリティに見立てているのでしょう。

ジュディは自分の発言を反省し、警察を辞めて実家にもどりました。

そこで、「夜の遠吠え」と呼ばれる花が、動物を凶暴化させることを知ります。

ジュディはズートピアにもどり、ニックに謝罪して、ともに事件の調査を継続。

黒幕がベルウェザー市長であることを知りますが、命をねらわれることになります。

ジュディとニックはひと芝居打ってベルウェザー市長をだまし、事件の自白をひきだして録音します。

こうしてベルウェザー市長は逮捕され、野生化事件は解決となりました。

 

「わかりやすい敵」をつくるベルウェザー市長

ベルウェザー市長はわざと肉食動物を「敵」に見立てて、支持を集めようとしたのニャ。

わかりやすい敵」をつくるのは、大衆を結束させてコントロールするのに使われる常套手段ですしね。

物事というはきわめて複雑です。

世の中、白と黒とできっちりわけられることはほとんどなく、だいたいがグレーです。

人間ひとりとってみても、良いだけの人・悪いだけの人というのは存在しません

しかしそういう複雑なことを考えられない(考えたくない)人たちは、物事を単純化して理解しようとします

「アメリカが不景気なのはメキシコ人や中国人のせいだ」みたいな、物事の単純化ニャ。

そういう要因もあるかもしれませんが、あくまで要因の一部でしかありません。

世の中の動きがそんな簡単に決定されることはなく、さまざまな要因が絡み合って現在の状態が生まれています。

それの一部だけをクローズアップして、あたかもその一部がすべての原因のように見せかけるのは、「わかりやすい敵」をつくるための典型的な手法といえます。

しかしこの映画がヒットしたにもかかわらず、「わかりやすい敵をつくる」という手法をつかってきたトランプ氏が、アメリカ大統領選挙で勝ち抜くこととなりました。

メッセージは伝わらなかったのニャ。

そうともいえず、むしろ平等を求めてトランプ氏に投票したという人もいるとは思います。

マイノリティに対する優遇政策によって、自分たちが不平等な扱いを受けていると感じる人たちですね。

そうなると、トランプ氏が当選すればそういう不平等がなくなるのではないかと期待したのかもしれません。

立場が違うと視点も変わるニャ。

文化の違いもありますし、いろいろな立場の人たちがいっしょに暮らしていくというのは難しいものがあります。

自分が社会的に抑圧されていれば、「わかりやすい敵」に原因を求めたがるでしょう。

日本は島国なので、多民族国家の難しさをこれまで経験できなかったというのがありますが、今後日本人の社会的立場や給料が低くなれば、ベルウェザー市長のような扇動者によって「わかりやすい敵」がつくられていくかもしれません。

給料が安いのは、そもそもその会社の問題ニャ。

「わかりやすい敵」は、大衆の不満のはけ口として攻撃対象となります。

そういう状況になったときに、「物事を単純化しすぎていないか」と一歩引いた視点を持てるかが重要になると思います。

 

まとめ

本作には、肉食動物・草食動物の対立だけでなく、さまざまなステレオタイプな差別や偏見というものが存在しています。

たとえばジュディがいった「ウサギどうしはいいけど、ウサギ以外がウサギに対して可愛いというのはどうなのか」というものです。

これは「ウサギ=可愛い」のステレオタイプ的な差別発言とされています。

この世界だとそうなるのニャ。

また「キツネはずるい」というのもステレオタイプ的な差別とされています。ニックは小さなころに受けたこの差別によって、詐欺まがいのことをするようになりました。

民族や性別だけでなく、世代間でもステレオタイプ的な差別意識というものはあります。

若者は~」「老人は~」みたいなやつニャ。

傾向」というものはあるのかもしれませんが、一部だけを取り出して、全体をわかりやすく理解しようとするところに差別や偏見が生まれるのでしょう。

そうならないためにも、ちょっと引いて物事をとらえることは必要だと思います。

本作はこのような複雑化する差別や偏見を、コメディたっぷりで伝えてくれる作品といえますね。

それと英語版の声優が、よく役にはまっていました。

とくにニック役のジェイソン・ベイトマンの声がいいですね。落ち着いた感じの声が、ニックにうまくマッチしていました。

本作は、もともとニックが主人公だったようですが、皮肉屋すぎるとのことで、明るいジュディを主人公に、ニックをその相棒にしたとのことです。

けっこう正解ニャ。ニックが主人公だと話が暗くなるニャ。

続編も予定されているようなので、期待したいと思います。