【蔡英文再選】2020年台湾総統選挙をわかりやすく解説
1月11日、台湾総統選挙の投票がおこなわれました。

筆者は日本人なので投票はできませんが、台湾の親戚たちは皆投票へ行きました。夕方ごろからニュースで出口調査や開票発表があったので、親戚たちと夕食をとりながら見ていました。
今回は台湾総統選挙がどのようなものなのか、その歴史や候補者などについて解説していきます。
直接選挙の始まり
「総統」という言葉ですが、「大統領」のことです。台湾の大統領を選ぶ選挙のことですね。
台湾で総統の直接選挙がおこなわれるようになったのは、1996年からです。
それ以前は国民大会代表を通しての関節選挙でした。
それまでは、基本的には国民党(中国国民党)からしか総統は出ませんでした。
第8回総統選挙で国民党の李登輝が総統になったのち、李登輝は台湾の民主化と直接選挙を推し進めていきました。

本当にそうですね。
台湾の直接選挙はアメリカを習って4年に一度とし、アメリカの大統領選とおなじ年におこなうことになりました。
そして1996年の第9回総統選挙から直接選挙がおこなわれ、李登輝は再選を果たしました。同年、アメリカ大統領選ではビル・クリントンが再選を果たしています。
2000年の第10回台湾総統選では、民進党(民主進歩党)の陳水扁が勝利します。台湾初の国民党以外の政党から総統が出たのです。
この勝利は、「台湾民主化の勝利」ともいわれました。武力を使わずに政権交代がなされたのです。
香港情勢と総統選挙
陳水扁は2004年の第11回台湾総統選挙で再選しました。
しかしスキャンダルなどで支持率が低迷し、次の選挙では国民党の馬英九に敗れます。
馬英九は第13回台湾総統選挙で民進党の蔡英文と戦い、勝利して再選を果たします。

けっこう接戦でしたね。得票率は51.6%でした。
しかし次の第14回台湾総統選挙(2016年)では、蔡英文は他の候補に圧勝して総統になります。
そして今回の第15回台湾総統選挙で、蔡英文がまたもや圧勝して再選しました。

そういうわけでもありません。一時期支持率は低迷していましたが、決定打となったのはやはり香港情勢でしょう。
香港では2019年の「逃亡犯条例改正案」が発端となり、反政府デモが拡大していったという現状があります。
「逃亡犯条例改正案」は簡単にいうと、犯罪者を中国側に引き渡すことができるという法案です。政治的に不都合な人物を逮捕するなど、中国が恣意的に利用できる危険性があるため、反対運動が起こりました。
デモ隊と警察との衝突は過激化し、ついには死者まで出す事態となったのです。
このことを受け、中国への不信感が台湾では強くなっていきました。
今回の選挙では、中国との距離を置こうとする蔡英文と、親中派である韓国瑜(国民党)という図式の戦いになっていました。このことから、大多数の浮動票が蔡英文に流れたのでしょう。
蔡英文は801万票。台湾での直接選挙がおこなわれて以来の最多得票数でした。
「初総統は再選する」の法則
それと台湾総選挙の慣例として、「総統になった人物は再選する」というのがあります。蔡英文の勝利も例外ではなかったようです。
これまでの総統を並べてみると、以下のようになります。
第1~5回 蒋介石
第6~7回 蒋経国
第8~9回 李登輝
第10~11回 陳水扁
第12~13回 馬英九
第14~15回 蔡英文

台湾の法律では、連続での再選は2回までと決まっています。
ちなみに今回の総統選挙に登場した宋楚瑜ですが、親民党という政党の代表です。中国湖南省の出身で、もとは国民党でした。李登輝政権下では李登輝を補佐していた人物です。
のちに李登輝と反目し、2000年の総統選挙に出馬したことにより、党籍をはく奪されます。そのことから第三勢力である親民党を結成しました。政治的には中国寄りで、中国共産党にパイプを持っています。

しかし外交には強いようで、蔡英文政権下では2016年のAPECで習近平総書記やプーチン大統領との会談もおこなっていました。
まとめ
今年の台湾総選挙ですが、ある意味予想通りの結果となりました。
ただ台湾国内は独立派が多いというわけではなく、経済的には中国の協力が必要という現実もあります。
あまり強い独立表明をしてしまうと中国からにらまれることにもなるため、いかに現状維持をしていくかが今後の課題となっていくでしょう。
台湾は国連からも排除されている国なので、難しい状況は今後も続いていくかと思われます。
